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二変数コロプレス・マップ

二変数コロプレス・マップ(Bivariate Choropleth Map)は 2つの異なる変数を同時に地理的に表現する地図 です。通常のコロプレス・マップ(単変量地図)が地域ごとの1つの値(例えば人口密度や所得水準など)を色の濃淡で表すのに対し、二変数コロプレスでは 2軸(2つの変数)を組み合わせて色相と明度、または2色のブレンドによって表現 します。

例えば、「平均所得(高⇄低)」を赤系の濃淡で、「教育水準(高⇄低)」を青系の濃淡で表現し、結果として紫色の濃淡が現れる場合、その地域は「所得も教育水準も高い」と解釈できます。

チャートの見方

要素説明
色相1変数A(例:所得水準など)を表し、値の高低を色の濃淡で示す。
色相2変数B(例:教育水準など)を表し、別の色系統で値の高低を示す。
色のブレンド(交点の色)2つの変数が交差する地点を示す混色(例:赤×青=紫)。地域の「2軸の組み合わせ的特徴」を表す。
凡例(Bivariate Legend)2次元の色マトリクスとして表示され、縦軸・横軸の関係性を視覚的に理解できる。
地図本体各地域が、2変数の組み合わせを色で表し、地理的分布と相関パターンを確認できる。

活用例と意義

二変数コロプレス・マップは 社会経済・健康・環境など、複数の要因が関係しあう現象を理解するために非常に有効 です。たとえば:

分野変数A変数B意図
社会経済所得水準教育水準経済と教育の地域格差の可視化
公衆衛生高齢化率医療施設密度医療アクセスの地域差を把握
都市研究住宅価格犯罪率都市環境と治安の関係を分析
環境統計森林率CO₂排出量環境保全と産業活動のバランスを検討

これらの関係を1枚の地図上で可視化することで、地域間の特徴や潜在的な課題をより立体的に把握できます。

デザイン上の工夫

デザイン要素説明
2色選定補色関係(例:青と赤)を選び、混色で中間値を自然に表現。
色の段階数通常は3×3または4×4のマトリクス(9〜16段階)で表現。
凡例の配置地図右下などに二次元マトリクス凡例を配置し、軸名と方向(高・低)を明示。
視認性の確保色覚多様性に配慮し、ColorBrewerのBivariateスキームなどを使用。

関連する背景知識

二変数コロプレス・マップの概念は、20世紀後半以降の 多変量地図学(Multivariate Cartography) の発展とともに注目されました。特にGIS技術が普及した1990年代以降、統計データの地理的相関を1枚で把握するための手法として定着しています。

代表的なツールとしては:

  • ArcGIS Pro(Esri社):「Bivariate Color Symbology」をサポート
  • QGIS(オープンソースGIS):スタイル設定で2変数表現が可能
  • R(ggplot2, tmap, cartographyパッケージ)
  • Vega-Lite などのWeb可視化ツールでも実装可能

まとめ

二変数コロプレス・マップは、単一変数では見落としがちな 複雑な地域特性の関係性を、直感的に理解できる強力な可視化手法 です。特に社会科学・都市研究・公衆衛生などの分野で有効に用いられています。デザイン面では、色の選定と凡例の明確化が成否を左右します。

参考・出典

Licensed under CC BY-NC-SA 4.0
Oct 22, 2025 22:33 +0900