Featured image of post ゲージ・チャート(Gauge Chart)

ゲージ・チャート(Gauge Chart)

ゲージ・チャート(Gauge Chart)は、メーターやスピードメーターのような半円形または円形のスケール上で、単一の数値を指針や針で示すチャートです。主に、ある指標の「現在値」が目標や許容範囲に対してどの位置にあるかを直感的に理解させるために用いられます。ダッシュボードや業務監視ツールなどでよく利用され、ユーザーが一目で状況を把握できるビジュアル表現です。

歴史的経緯

ゲージ・チャートの起源は、機械式計器のデザインにあります。自動車や航空機、工業用メーターに使われるアナログ計器がその原型です。デジタルダッシュボードが普及するにつれ、これらのアナログ表現を模倣した「仮想メーター」が可視化ツールに取り入れられました。特に、Microsoft Excel、Tableau、Power BI などのビジネスインテリジェンスツールで一般的に採用され、リアルタイムデータのモニタリング用途に発展しました。

データ構造

ゲージ・チャートは通常、以下のような単純なデータ構造で表現されます。

データ項目説明
現在値メーター上で示す数値
最小値スケールの下限値
最大値スケールの上限値
閾値・ゾーン緑・黄・赤など、状態を表す区間

これらをもとに、ゲージの角度や色分けが計算され、針やアーク(円弧)で描画されます。

目的

ゲージ・チャートの主な目的は、「単一指標の現状を評価基準と比較し、即座に理解させること」です。たとえば、売上達成率、サーバ稼働率、満足度スコアなど、1つの指標を目標や安全域と比較する用途に向いています。

ゲージ・チャートは、主に 単一の指標(KPIなど) を評価するために使用されます。 具体的には、次のような用途に適しています。

  • 目標達成率の表示(例:売上目標の進捗)
  • 設備の稼働率や利用率の監視
  • 顧客満足度・品質スコアの視覚化
  • センサー値(温度・圧力・速度など)のリアルタイムモニタリング

このチャートは 直感的な理解 を促す一方で 複数指標の比較時系列変化の表示 には不向きです。

ユースケース

  • ビジネスダッシュボード:KPI(重要業績評価指標)の達成度を可視化
  • システム監視:CPU使用率やネットワーク負荷のモニタリング
  • 顧客満足度調査:スコアレンジをゾーンで区分して表示
  • 品質管理:生産ラインの稼働効率を表示

特徴

特徴内容
直感性メーター形状により状態を瞬時に把握可能
単一指標向け複数指標の比較には不向き
視覚的強調色分けゾーンによる「危険/注意/良好」状態の強調が容易
空間効率表現面積が大きく、ダッシュボード内での占有が多い

チャートの見方

ゲージ・チャートの読み取りは、アナログメーターと同様です。針の位置が中央付近であれば目標付近、右端に近ければ高水準、左端に近ければ低水準と解釈します。背景のゾーン色が設定されている場合、緑は安全、黄色は注意、赤は警戒を意味することが多いです。

要素説明
1. スケール範囲(最小値〜最大値)値の全体的な範囲を示す円弧部分。通常は0を起点とし、最大値を右端に設定します。
2. 目盛り(刻み)数値の読み取りを補助する線や数字。針の位置の定量的な理解を助けます。
3. 色域(セグメント)範囲ごとに異なる色を割り当て、「危険・注意・良好」などを視覚的に分類します。
4. 針(インジケータ)現在の値を指す要素。スケール上の角度で、現在値を示します。
5. 目標値ライン(任意)KPIや目標値を別のマークで明示する場合に用いられます。

デザイン上の注意点

  1. 最小値は原則0に設定する
     0以外から始めると、針の位置が誤解を招く場合があります。
  2. 色の分割は慎重に
     閾値の設定が曖昧だと「良・悪」の判断が不明確になります。
  3. 過剰な装飾を避ける
     立体的な影や光沢を付けすぎると、情報伝達よりデザイン重視に見える恐れがあります。
  4. 比較には代替チャートを検討
     複数KPIを比較する場合は、バレット・グラフや棒グラフの方が適切です。
  • 比較には不向き:複数ゲージを並べると視覚的比較が難しくなります。
  • スペース効率:単一指標に対して必要な描画面積が大きいため、KPI数が多い場合には他のチャート(例:棒グラフやバレットグラフ)を検討します。
  • 色の使いすぎに注意:緑・黄・赤の3段階表示が一般的ですが、過剰な色数は混乱を招きます。
  • 軸スケールの一貫性:複数ゲージを使用する場合は、スケールを統一することで正しい比較が可能になります。

応用例

  • セミサークル型ゲージ:ダッシュボードで最も一般的なタイプ
  • ドーナツ型ゲージ:中央に数値を表示し、省スペース化を実現
  • 水平ゲージ:線形スケールを用いたバー形式のゲージ
  • デジタルゲージ:針を使わず、数値+色のみで状態を表す簡易表示

代替例

ゲージ・チャートは直感的である一方、定量的比較には弱いため、以下の代替表現が効果的です。

チャート種別特徴適した用途
バレット・グラフ(Bullet Graph)ゲージを直線上で表現し、複数値の比較に向くKPIの並列比較
ドーナツ・チャート円環の一部を塗りつぶして割合を示す全体に対する進捗率表示
棒グラフ値の比較・増減が明快複数項目の比較や時系列分析

まとめ

ゲージ・チャートは、単一指標を目標や基準と対比させ、状態を直感的に伝える優れた手法です。ただし、複数指標の比較や時系列変化の分析には不向きであるため、用途に応じて他のチャートと併用することが望まれます。特にダッシュボード設計では、ユーザーがすぐに「正常・注意・異常」の判断を下せるような配色とスケール設計が重要です。

参考・出典

Licensed under CC BY-NC-SA 4.0
Nov 12, 2025 18:06 +0900