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満足は白、不満は赤のビーズで答える──ヘルシンキ大学構内の Antell カフェテリアの棒グラフ

ヘルシンキ大学の構内にある Antell のカフェテリアの出口に置かれた、物理的な棒グラフです。客は、満足なら白いビーズを、不満なら赤いビーズを入れます。

目次
  1. 01出口の机に置かれたもの
  2. 02色と高さに何を対応させたか
  3. 03dataphys は同じ型の装置と並べている
  4. 04使い道
  5. 05参考・出典

ヘルシンキ大学の構内にある Antell のカフェテリアの出口に、物理的な棒グラフが置かれていました。客が白いビーズ(満足)か赤いビーズ(不満)を入れる仕組みです。

出典は、物理的な可視化を集めたサイト dataphys.org(List of Physical Visualizations)の項目「Physical Customer Satisfaction Survey」です。2015年3月に Pierre Dragicevic(ピエール・ドラジチェヴィッチ)が登録しました。本文は2文で、写真は Luana Micallef(ルアナ・ミカレフ)が撮った1枚です。以下は、この2文と写真に沿います。

出口の机に置かれたもの

項目の本文は次のとおりです。

Participatory physical bar charts at the exit of the Antell cafeteria at the University of Helsinki. White beads represent statisfied customers, red beads are unsatisfied ones.

ヘルシンキ大学の Antell のカフェテリアの出口にある、参加型の物理的な棒グラフ。白いビーズは満足した客を、赤いビーズは満足しなかった客を表す、という要旨です。“statisfied” は原文のつづりのままです。

Source 欄は「Antell」で、リンク先は Antell のトップページです。装置についての記述はありません。Source 欄が Antell であることから、大学の運営ではなく Antell の店と読めます。撮影した Micallef は、2015年当時、ヘルシンキ情報技術研究所(HIIT)に所属していた可視化の研究者です。

Photo by Luana Micallef/dataphys.org より引用

写真に写っているものを、手前から書きます。

  • 四角いガラスの器が二つあり、左の器に白いビーズ、右の器に赤いビーズが入っています。
  • その奥の透明なスタンドのカードには、Antell のロゴの下に、白い笑顔と赤い困り顔が並んでいます。
  • 左には細長いガラスの筒が立っていて、底に白いビーズがたまっています。
  • 筒の後ろの札には、フィンランド語と英語で問いが書かれています。一部が筒に隠れていますが、英語は「How did we serve you today?」と読めます。
  • 奥には「ASIAKASPALAUTE」と書いた白い箱があり、左手前には紙の束があります。

カードの二つの顔は、ビーズの色の凡例と読めます。手前の二つの器は、客がビーズを取るための置き場と読めます。写真に写っている筒は1本で、中のビーズは白だけです。本文は「bar charts」と複数形ですが、ほかの筒がどこにあったかは、写真からは分かりません。

色と高さに何を対応させたか

データと物の性質の対応を、根拠とあわせて表にします。

データ物の性質根拠
客の評価(満足/不満)ビーズの色(白/赤)本文に書かれている
色の意味カードの白い笑顔と赤い困り顔写真に写っている
答えた人客自身がビーズを入れる本文の「Participatory」
答える時点置き場所(カフェテリアの出口)本文に書かれている
回答の数筒にたまったビーズの高さ本文の「bar charts」と写真の筒からの読み
回答者一人ビーズ一個出典に記述なし

本文に書かれている対応は、色だけです。 高さで数を読むという点は、「棒グラフ」という呼び方と写真の筒からの読みです。一人が何個入れるのか、棒を何で分けたのかは、出典に書かれていません。設置期間、集まったビーズの数、満足と不満の比、装置をデザインした人も、出典からは分かりません。

dataphys はこの装置を、Passive physical visualization に分類しています。動力や電子部品を使わない物理的な可視化のカテゴリです。表示を更新するのは、ビーズを入れる客の手だけだと読めます。

dataphys は同じ型の装置と並べている

項目の Related 欄は、この装置を次の三つと並べています。

Related: Also see similar contraptions by Hans Haacke (1970), Lucy Kimbell (2006), and Jennifer Payne (2014).

Haacke(1970)、Kimbell(2006)、Payne(2014)の、似た仕掛けも見てほしい、という一文です。Related 欄の3つを「similar contraptions(似た仕掛け)」と呼び、本件も同じ型として並べていると読めます。本件は、店が顧客アンケートのために置いた道具と読めます(出典に目的の記述はありません)。

項目には participatory(参加型)のタグも付いています。タグのページは、古代ギリシャの小石の投票から始まり、こう書いています。

The earliest participatory visualizations were probably voting systems.

最も古い参加型の可視化は、おそらく投票の仕組みだった、という要旨です。dataphys の項目から、答えの分け方を並べます。

装置年答えをどう分けるか
小石の投票(古代ギリシャ)—小石の色(白=賛成、黒=反対)。壺を二つ使うこともあった
Hans Haacke『MoMA Poll』1970箱の位置(左の箱=Yes、右の箱=No)
Lucy Kimbell『Physical Bar Charts』2006バッジを取り出すので、票が多いほど棒が低くなる
Jennifer Payne『Physical Visual Sedimentation』2014ガムボールの色で、学内のグループを分ける
Antell の装置2015(登録年)ビーズの色(白=満足、赤=不満)

Haacke の『MoMA Poll』は、賛否を箱の位置で分けました(記事)。Antell の装置は、小石の投票と同じく、答えを色で分けています。色で分けると、棒の位置には別のものを割り当てられると読めます。ただし、この装置が位置で何を分けていたかは、確かめられません。

dataphys の扱いは、評価の文ではなく分類です。この装置そのものを論じた批評や報道は、読める形では見つかりませんでした。

使い道

この装置では、答える行為と、結果を見せる行為が、同じ筒の上で起きます。出口を通る次の客も、それまでにたまったビーズを見られると読めます。

この写真では、笑顔と困り顔のカードが凡例と読めます。文字を読まなくても、白と赤の意味が分かる作りと読めます。

写真に写っている材料は、ビーズ、ガラスの器と筒、札とカードです。電子部品はありません。同じ型は、手元の材料で組み立てやすいと読めます。

この装置の集計や記録は、出典に書かれていません。『MoMA Poll』は、光電式カウンターで最終日の票数を残しました(記事)。一般論として、物の上で集める場合は、数えて記録する手順も決めておくと後で使えます。

参考・出典

一次情報

  • dataphys.org「2015 – Physical Customer Satisfaction Survey」(Added by Pierre Dragicevic、2015-03-12 登録):https://dataphys.org/list/physical-customer-satisfaction-survey/
  • 写真(Photo by Luana Micallef):https://dataphys.org/list/images/uploads/2015/03/antell.jpg
  • Antell(項目の Source 欄のリンク先。装置の記述はない):http://www.antell.fi/
  • 撮影者の2015年の所属(HIIT):https://research.aalto.fi/en/activities/creating-high-quality-figures-for-your-publications/

比較・背景資料(dataphys.org の関連ページ。この装置そのものの評価ではありません)

  • dataphys.org participatory タグ:https://dataphys.org/list/tags/participatory/
  • dataphys.org Passive physical visualization カテゴリ:https://dataphys.org/list/categories/passive-physical-visualization/
  • dataphys.org Pebble Voting:https://dataphys.org/list/visualizing-opinions-with-pebbles/
  • dataphys.org MoMA Poll(Haacke, 1970):https://dataphys.org/list/moma-poll-haackes-participatory-bar-chart/
  • dataphys.org Inverted Participatory Bar Charts(Kimbell):https://dataphys.org/list/physical-bar-charts/
  • dataphys.org Physical Visual Sedimentation(Payne, 2014):https://dataphys.org/list/physical-visual-sedimentation/
矢崎裕一 データ可視化の実務家
プロフィール

この記事は CC BY-NC-SA 4.0 で公開しています。