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つららチャート(Icicle Chart)

つららチャート(Icicle Chart)は、階層構造データを長方形の積み重ねで表現する可視化手法です。ツリー構造の各ノードを矩形で表し、親ノードの下に子ノードを配置します。表示方向は通常上から下(つららのように垂れ下がる)ですが、左右方向に展開する場合もあります。階層全体を俯瞰できる点で、サンバーストチャートやツリーマップに近い性質を持ちます。

歴史的経緯

Icicle Chartは、1980年代にH. KruskalとJ. Landwehrらによって提案された「表示密度の高い階層構造可視化」の一種として登場しました。その後、Ben Shneiderman(1992年)のツリーマップとともに階層構造の可視化研究で発展し、現在はD3.jsやPlotlyなど多くの可視化ライブラリで標準的に実装されています。

データ構造

つららチャートは階層(ツリー)構造を持つデータを可視化します。各ノードには「ラベル名(name)」と「値(value)」があり、親ノードの下に子ノードを入れ子状に配置します。ノードの大きさは値の大きさに比例し、階層の深さによって色や位置が変化します。

キー内容
nameノード名(カテゴリやラベル)
valueノードの値(数値的な大きさ)
children子ノード(配列)

目的

Icicle Chartの主な目的は、階層構造の中で「どの階層がどのくらいの比率を占めているか」を一目で理解することです。各ノードの矩形の長さや面積は、値(value)に比例しており、上位階層から下位階層への分解を直感的に追うことができます。

ユースケース

  • 組織構造や製品カテゴリなどの階層データの可視化
  • ファイルシステムの容量分析(フォルダごとのサイズ比較)
  • 売上構成や地域別市場シェアの内訳
  • Webサイトのページ階層構造の可視化

特徴

特徴説明
構造の明示性階層関係を矩形の入れ子構造で明確に示す
比率の可視化各ノードの値に応じて長さを調整し、構成比を視覚化
コンパクト性サンバーストチャートに比べて省スペースで表示可能
相互作用ツールチップやズーム機能を追加しやすい

チャートの見方

上端(または左端)が階層の根(root)にあたり、下に行くほど詳細な階層(子ノード)が現れます。各矩形の長さはノードの値を表し、色やグラデーションでカテゴリや深さを区別することが一般的です。ユーザーは矩形をクリックして階層を展開・折りたたむこともできます。

デザイン上の注意点

  • 深すぎる階層は避ける:情報密度が高くなり、判読性が落ちる。
  • 色の設計:階層の深さをHueではなくSaturationやBrightnessで表現すると、統一感が出やすい。
  • ラベル配置:矩形が小さい場合、ツールチップやインタラクションで補う。
  • 方向性の選択:縦方向(Icicle)・横方向(バー状)いずれも可、用途に応じて選ぶ。

応用例

  • D3.jsのd3.partition()を利用したインタラクティブなツリー構造表示
  • PlotlyやEChartsでの「Sunburst ↔ Icicle」切り替え型ダッシュボード
  • 組織構造、顧客層分析、分類体系(taxonomy)の可視化

代替例

チャート種別比較ポイント
ツリーマップ(Treemap)面積を使うが、全体構造の階層深度が見えにくい
サンバーストチャート(Sunburst)放射状で視覚的だが、スペース効率が低い
階層エッジバンドル(Hierarchical Edge Bundle)構造間の関係強調に向くが、数量比較には不向き

まとめ

つららチャートは、階層構造を明快に視覚化し、構成比や分解構造を一目で理解できる優れた手法です。ツリーマップよりも階層構造を保持しやすく、サンバーストよりも省スペースであるため、構造理解を重視する情報デザインに適しています。

参考・出典

Licensed under CC BY-NC-SA 4.0
Nov 12, 2025 18:06 +0900