アイソプレス・マップ(Isopleths Map)は、連続量の分布を面(ポリゴン)で塗り分けて表現する主題地図です。
元になるデータを空間補間し、等しい値を示す境界(等値線)をもとに面を区切り、その面ごとに色や濃淡を与えます。
これは “面としての連続量” を読み取りたいときに強力で、気温・湿度・騒音、大気汚染、人口密度のスムースな連続化などでよく用いられます。
どんなときに使うのか
アイソプレス・マップが得意とするのは 面として連続変化する現象 の把握です。
- 気温・湿度・風速など気象の“広がり”
- PM2.5 や NO₂ などの大気汚染濃度
- 海水温・水質指数などの環境データ
- 人口密度の連続的な推定値(Kernel Density)
- 騒音レベル、放射線量、ヒートアイランド強度
こうした量は周囲の環境条件(地形・距離・風)とともに連続的に変化するため 境界を色分けするだけのコロプレスでは捉えにくい空間的広がり を視覚化できます。
どのようにつくられるか
アイソプレス・マップの制作プロセスは次のとおりです。
1. 観測点データの取得
センサー・観測所・調査地点など、点データを基本とします。
2. 空間補間(Interpolation)による連続面の生成
- クリギング
- IDW
- スプライン
などを使い、観測点の値から周囲の値を推定し、ラスタ形式の“連続面”(フィールド)を作ります。
3. 等値境界(等値線)の抽出
値の区切りを決め、
- 気温 → 20°C / 22°C / 24°C …
- PM2.5 → 10 / 20 / 30 μg/m³
のように 等値の境界線を取り出します。
4. 面としての塗り分け
等値線で区切られた面に対して、
- カテゴリカラー
- グラデーションカラー(連続色)
- 等間隔または分位法などの分類ルール
を適用して値の範囲を表現します。
5. 凡例・注記・基図の調整
値区分と色の対応、単位、補間方法を明記し、背景に地形や行政界を薄く配置します。
読み方のポイント
1. 色の“順序”を確認する
色が濃いほど値が大きいのか、小さいのか、凡例で確認します。
グラデーションは連続量の大小を直感的に把握できます。
2. 階級区分がどのように設定されているかを見る
- 等間隔
- 分位数
- 自然分類
区分方法が違うと、同じデータでも分布が大きく変わって見えることがあります。
3. どの地域がどの値帯に含まれるかを把握する
行政境界を背景に薄く重ねておくと、
「どの自治体で高い/低い」が分かりやすくなります。
4. 補間の信頼性を確認する
観測点が少ない領域は色が塗られていても、推定値に不確実性があります。
(可能であれば観測点を点で示すと親切です)
メリット
連続量の広がりを“ひと目で”把握できる
→ 特に環境データや気象データで強力。値の境界が滑らかに見えるため、コロプレスより自然な表現が可能。
色の変化によって高低・強弱の中心や勾配が直感的に理解できる。
定性的分析(高い地点・低い地点の分布)に強く、説得力あるビジュアルになる。
デメリット・注意点
補間に依存するため“データの少ない地域”に注意
→ 美しく塗られていても、推定が荒い場合もある。分類の区切り方で印象が変わりやすい
→ 読者に誤解を与えないように、凡例の明示が必須。正確な数値を読むには向かない
→ 個別地点の正確値や、行政単位の平均値を示す用途には合わない。
実例
- 気温・湿度・大気汚染(PM2.5)の連続分布図
- 海面水温の広域グラデーション
- 都市ヒートアイランドの強度面
- 都市近郊の騒音レベルマップ
- 人口密度推定面(Kernel Density Estimation)
関連する主題図
- ヒートマップ(連続面を色で表現)
- コロプレス・マップ(行政区単位の塗り分け)
- アイソライン・マップ(値が同じ地点を線で表す)
※本記事と独立して読めます。