かねてから、Mapbox Studio で作成した地図タイルを Kepler.gl や Foursquare Studio で用いることが出来る機能が提供されていましたが、ここ数年、Kepler.glやFoursquare StudioでMapbox Studioのスタイルを指定しても、地図が表示されないという現象が報告されています。
以前は正常に読み込めていたにもかかわらず、突然「Failed to load map style」などのエラーが出るようになりました。
この原因は、Mapbox Studio側の仕様変更にあります。本記事では、Mapboxのスタイル仕様がどのように変わり、なぜこのような互換性問題が起きているのかを解説します。
現象の概要
Kepler.glやFoursquare Studioなど、Mapboxベースのビジュアライゼーションツールを使用しているユーザーの間で、以下のような問題が報告されています。
- Mapbox Studioで作成したスタイルをKepler.glに指定しても地図が真っ白になる
- 「Failed to load map style」または「This style uses Mapbox Standard」というエラーが表示される
背景:Mapbox Standardへの移行
2024年以降、Mapboxは従来の「Classicスタイル(v2以前)」を段階的に廃止し、新しい「Mapbox Standard」形式(GL JS v3専用)へ完全移行しました。この変更はMapbox Studioの内部仕様とUIの両方に影響を与えています。
主な変更点は以下の通りです。
項目 | 旧仕様(Classicスタイル) | 新仕様(Mapbox Standard) |
---|---|---|
対応バージョン | Mapbox GL JS v2以前 | Mapbox GL JS v3以降 |
スタイル名例 | light-v11 , dark-v11 , streets-v12 |
standard , monochrome , faded |
互換性 | Kepler.glやMapLibreで使用可能 | 非互換(v3専用機能を含む) |
Mapbox Standardでは、地形(terrain)や霧(fog)などの3D表現機能が統合されており、MapLibreやKepler.glのようなv2互換エンジンでは解釈できない要素が含まれています。そのため、従来のClassicスタイルを参照する外部ツールが正常に動作しなくなっています。
回避策:Classicスタイルを再登録する
現時点でも、Mapboxは一部のClassicスタイルを「Legacy(レガシー)」としてAPI経由で提供しています。スタイルの一覧です。
スタイル名 | スタイル URL | 備考 |
---|---|---|
Streets | mapbox://styles/mapbox/streets-v12 |
標準道路地図 |
Light | mapbox://styles/mapbox/light-v11 |
明るいテーマ |
Dark | mapbox://styles/mapbox/dark-v11 |
暗めのテーマ |
Outdoors | mapbox://styles/mapbox/outdoors-v12 |
アウトドア地形+道路表示 |
Satellite | mapbox://styles/mapbox/satellite-v9 |
衛星写真地図 |
Satellite Streets | mapbox://styles/mapbox/satellite-streets-v12 |
衛星写真+道路ラベル表示 |
Navigation Day | mapbox://styles/mapbox/navigation-day-v1 |
ナビゲーション用:日中モード |
Navigation Night | mapbox://styles/mapbox/navigation-night-v1 |
ナビゲーション用:夜間モード |
これらのJSONファイルをAPI経由でダウンロードし、Mapbox Studioに「Upload」→「Publish」して再登録することで、Kepler.glやFoursquare Studioでも再び利用できるようになります。
この手法は、旧仕様に依存する外部ツール(Kepler.glやFoursquare Studioによるベースマップの読み込み機能)を今後も使い続けたいユーザーにとって、現実的かつ安定した解決策となります。
容易にJSONファイルを取得するためのツールを作成しましたので、役立ててください。
今後の見通し
Mapboxは「Mapbox Standard」を中心としたv3世代への移行を進めています。 地形や3D要素を含む新表現が増える一方で、Classicスタイルとの互換性は今後さらに限定される見込みです。
そのため、データビジュアライゼーション用途でKepler.glなどを継続使用する場合は、ClassicスタイルのJSONをローカルにバックアップし、Mapbox Studio上で再登録する方法を維持することが推奨されます。
まとめ
- Mapbox Studioは2024年以降「Mapbox Standard」形式へ全面移行
- Classicスタイル(Light v11など)は新UIから直接作成できなくなった
- Kepler.glやFoursquare Studioで地図が表示されない原因は、この仕様変更によるもの
- ClassicスタイルをJSONとして再登録することで回避可能
- 将来的には、Mapbox GL JS v3への移行が求められる可能性が高い
注意:Classicスタイルは今後更新されません。
Mapboxは Classic スタイルを「互換性維持のために限定的に提供」していますが、道路・建物・行政界などの地物データは新しい更新を受けていません。
そのため、現行の地図と差異が生じる可能性があります。
特に行政区画の変更や新しい道路の追加などは反映されません。可視化背景として利用する場合は問題ありませんが、最新の地理情報を重視する用途では Mapbox Standard への移行を検討してください。