この作品は、1957年のスプートニク打ち上げ以降に宇宙へ送られたすべての人工物を、時間軸に沿って丁寧に可視化したインフォグラフィックスです。イタリアの新聞 Corriere della Sera の文化別冊 La Lettura に掲載され、毎年恒例の「Orizzonti Visual Data」シリーズの一つとして発表されました。
図解の概要
中央の波形のような可視化は、1957年から2022年までに打ち上げられた人工物(衛星、ロケット、探査機、ステーションなど)の累積数を表しています。
それぞれの層は時間の経過を中心に左右対称に広がり、年ごとの増加を直感的に感じ取れるようになっています。
- 太い線と色の交替 :各年の区切りを示しています。
- 層の幅と線の密度 :打ち上げ数の累積を示します。
- 1本の線が約50個のオブジェクトに相当します。
- 色の交互変化(ピンクとブルー) :5年ごとのリズムを形成し、時間の流れを視覚的に強調しています。
右端には、2022年の国別打ち上げ数と、軌道上に残るオブジェクトの現況が示されています。
凡例の見方
左側の凡例は、この図の構造を理解するための鍵となっています。
- 「太い線」と「色の交替」は年の境目を意味しています。
- 各層の幅と内部の線の本数が、その年までに打ち上げられた物体の累積数を示しています。
- 「1 = 50 objects」という注記により、1本の線が約50個の打ち上げに対応していることがわかります。
このように、時間とともに層が広がっていく形が、そのまま人類の宇宙進出の歩みを象徴しているのです。
右側の凡例は、2022年における国別の打ち上げ数を示しています。
- 円の大きさは打ち上げ数を表しています。
- 上部の「Current state of the objects」では、軌道上に残っている物体が約29%、すでに軌道を離脱したものが約71%であることがわかります。
背景とデータ
この作品は、宇宙開発の加速を 時系列で量的に把握する ためのデータ・ビジュアライゼーションです。単なる統計グラフではなく、「時間」と「空間」の拡張を感じさせるデザインが特徴的です。
2010年代以降、民間企業(たとえばSpaceXなど)の参入によって打ち上げ数が急増していることが、図の右端からも読み取れます。
データは Our World in Data による統計を基にしており、2022年時点での国別打ち上げ数では、アメリカが1,796件、中国が131件、イギリスが71件とされています。この差は宇宙産業の集中度を端的に示しています。
まとめ
Federica Fragapaneの「Objects launched into space」は 科学史とデータ美学の交差点 に立つ作品です。
人類の宇宙活動を、数量と形態の両面から俯瞰できるように設計されており、単なる情報の可視化を超えて 時間の積み重ねそのものを造形化した作品 といえます。
参考・出典
- Objects launched into space :: Behance
- Cumulative number of objects launched into outer space :: Our World in Data
- Annual number of objects launched into outer space :: Our World in Data
- United Nations Register of Objects Launched into Outer Space :: UNOOSA
- Online Index of Objects Launched into Outer Space :: UNOOSA
- Space Exploration and Satellites :: Our World in Data
- Payloads and rocket bodies in space, by orbit :: Our World in Data