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ポーラー・エリア・チャートとは? ― 周期性データを強調する可視化手法

ポーラー・エリア・チャート(Polar Area Chart)は、円グラフやローズチャート(Coxcomb chart)に近い形式を持つ可視化手法です。 すべてのセクターが等しい角度を持ち、半径の長さ(あるいは面積)が値の大小を表す というのが大きな特徴です。 歴史的には、フローレンス・ナイチンゲールがクリミア戦争の病死原因を示す際に用いた「コックスコム図(Coxcomb diagram)」が代表的な先駆例として知られています。

コックスコム図

使いどころ

ポーラー・エリア・チャートは、カテゴリが循環性を持つデータを可視化するのに特に向いています。たとえば以下のような場面で有効です。

  • 月別データ …例:月ごとの売上、気温、降水量。季節の移り変わりを円形に配置することで、周期性が一目でわかる。
  • 時間帯別データ …例:1日のアクセス数、電力消費、交通量。24時間を放射状に置くと、朝・昼・夜のピークが直感的に理解できる。
  • 曜日別データ …例:来客数やSNS投稿数。1週間のサイクルを表すのに適している。
  • 自然現象や疾病データ …例:インフルエンザ流行の季節性、風向や潮汐といった周期的な現象。

他のチャートとの比較

ポーラー・エリア・チャートは、円グラフや棒グラフ、レーダーチャートとしばしば比較されます。それぞれの違いをまとめると次の通りです。

チャート種別 特徴 ポーラー・エリア・チャートとの違い
円グラフ (Pie Chart) セクターの角度で比率を表す。 ポーラー・エリア・チャートは角度が固定され、半径の長さで値を表現。比率よりも周期パターンを強調できる。
棒グラフ (Bar Chart) 棒の長さで値を表す。比較しやすい。 棒グラフは比較精度が高い。ポーラー・エリア・チャートは循環配置でパターン把握に優れる。
レーダーチャート (Radar/Spider Chart) 軸ごとに値を放射状に示し、点を線で結ぶ。 レーダーは全体の形を比較するのに強い。ポーラー・エリア・チャートはセクターごとの大きさを強調。
ローズチャート (Rose Chart, Coxcomb) ポーラー・エリア・チャートとほぼ同義。 ナイチンゲールのコックスコム図が代表例。用語が重なる場合が多い。

ポーラー・エリア・チャートの強みと注意点

強み

  • 周期性・循環性のパターンを直感的に示せる。
  • 視覚的にインパクトがあり、デザイン性も高い。
  • 同心円グリッドを加えることで値の目安を明確にできる。

注意点

  • 放射方向が異なるため、セクター間の比較精度は棒グラフほど高くない。
  • データ点数が多いと混雑し、読み取りづらくなる。
  • 値の差が小さいと視覚的な違いが目立ちにくい。

まとめ

ポーラー・エリア・チャートは、周期的なカテゴリデータをリズムとして見せたいときに有効な可視化手法です。 正確な数値比較には棒グラフが適している一方、ポーラー・エリア・チャートは 「パターンを直感的に理解させる」 という点で強みを発揮します。

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