レンジ・プロット(Range Plot) は、各項目に対して「2つの値(下限と上限、あるいは開始と終了)」を線で結び、その 範囲(レンジ) を可視化するチャートです。カテゴリごとに2点の数値を持つデータ(例:最低値と最高値、前年と今年、男性と女性など)を比較する際に使われます。
構造としては ドット・プロット(Dot Plot) を拡張した形であり、2つの点を線で結ぶことにより「差」や「広がり」を一目で理解できるようにしたものです。
別名として「 ギャップ・チャート(Gap Chart) 」「 ダンベル・チャート(Dumbbell Chart) 」「 レンジ・ライン・チャート(Range Line Chart) 」などが使われます。
チャートの構造と読み方
要素 | 内容 |
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軸(X軸またはY軸) | 比較したい数値の尺度(価格、時間、割合など)を取ります。 |
カテゴリ軸 | 各比較対象(商品、国、年など)を並べます。 |
2つのマーカー | 比較したい2つの値(開始値と終了値、最小値と最大値など)を表します。 |
線(区間) | 2つのマーカーを結び、範囲や変化量を示します。 |
色または形 | グループや比較対象を区別するために用いられます。 |
見方としては、線が長いほど「差」や「変化量」が大きく、短いほど差が小さいことを意味します。また、右上がり・右下がりの傾向などから、全体のトレンドや方向性を把握できます。
主な用途
レンジ・プロットは次のような分析に適しています。
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前後比較(Before–After)
例:製品の価格改定前後、男女間の平均給与の比較、前年と今年の値など。 -
最小値と最大値の可視化
例:気温の最低・最高、年収レンジ、誤差範囲の表現など。 -
差分・ギャップの強調
単に2点の数値を示すよりも、線の長さで差を視覚的に表現できるため、「どこで差が大きいか」をすぐに見つけられます。 -
複数対象の比較
複数の項目を縦に並べることで、全体のパターン(差の大きい対象、小さい対象)を俯瞰できます。
他のチャートとの関係
チャート形式 | 違い・関係 |
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ドット・プロット | 単一の値を点で示す。レンジ・プロットはその拡張で、2点間を線で結ぶ。 |
誤差棒グラフ(Error Bar) | 中央値と上下の誤差範囲を示す。レンジ・プロットは個々の実測値(2点)を直接比較する。 |
ボックス・プロット | 分布全体(中央値・四分位点など)を表す。レンジ・プロットは単純な2値比較に特化。 |
ガント・チャート | 時間の範囲を表すという点で似ているが、目的はスケジュール管理にある。 |
利点と注意点
利点
- 2つの値の差・方向を視覚的に理解しやすい
- 複数対象を並列比較できる
- 情報がシンプルで、余計な装飾が不要
注意点
- 3点以上のデータ(例:時系列の推移)には不向き
- 線が重なりすぎると読みづらくなるため、項目数が多い場合は色分けや並べ替えが必要
- 単位や軸スケールの統一が重要
まとめ
レンジ・プロットは、「2つの数値の差や範囲を、直感的かつコンパクトに比較する」ためのチャートです。
ビジネス分析や統計報告、デザイン分野でもよく用いられ、シンプルながら情報量の高い可視化手法といえます。
ドット・プロットの拡張形として 変化・差・範囲を一目で見せる という点において非常に有効です。