リッジライン・プロット(Ridgeline Plot)は、複数のグループ(カテゴリ)ごとの 連続変数の分布 を縦方向に重ねて描画するグラフです。
各グループの分布を「稜線(ridge)」のように積み重ねることで、全体の比較や変化の傾向を直感的に理解できます。

別名として「Joyplot」とも呼ばれます。これは、イギリスのバンド Joy Division のアルバム『Unknown Pleasures』(1979年)のカバーアートに形が似ていることに由来します。このアルバムジャケットは、電波パルス信号を可視化した図形であり、その「波打つ山並み」がリッジライン・プロットの象徴的なイメージの原点となりました。
チャートの見方
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| 各曲線(稜線) | 特定カテゴリの分布(例:各年、各地域など)を表す。密度曲線やヒストグラムに基づく。 |
| 縦方向の並び | 分類(カテゴリ)の順序。通常は時系列やカテゴリー順に並べる。 |
| 横軸 | 対象となる数値変数(例:収入、温度、測定値など)。 |
| 稜線間の重なり | 分布同士の比較を視覚的に可能にする。重なりすぎると見づらくなるため、透明度やスケール調整が重要。 |
| 色や透明度 | 各カテゴリを区別したり、強調するために使用される。 |
背景と特徴
リッジライン・プロットは、データ分布を 省スペースで多層的に 表現できる手法として、時系列や地域別の変化を比較する際に有効です。
とくに以下の点で優れています:
- 分布の形状の比較:複数のカテゴリを一枚の図で俯瞰できる。
- トレンドの可視化:時間や順序に応じた変化を滑らかに見せることができる。
- 視覚的魅力:稜線が波のように連なるため、芸術的・印象的な表現としても活用される。
一方で、重なり具合が大きすぎると識別が困難になるため、適切な「スケール」や「透明度(alpha)」の設定が重要です。
実践上のポイント
- カテゴリ順の設定:平均値や中央値順に並べると分布差が明瞭になる。
- バンド幅の調整:平滑化(カーネル密度推定)パラメータを変えることで山の鋭さを調整可能。
- 透明度設定:オーバーラップが強い場合は
alpha値を小さくして視認性を確保する。 - 補助線・注釈:平均や四分位線を重ねると、定量的比較が容易になる。
まとめ
リッジライン・プロットは、統計的な分布比較を「層の重なり」で魅せるグラフです。
Joyplotに由来するビジュアル的美しさと、分布比較の実用性を兼ね備えており、RやPythonなどの環境で手軽に作成できます。
データ数が十分にある場合には、複数群の「変化の風景」を描く強力な手法となります。
