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時空間キューブ(Space-Time Cube)とは

時空間キューブ(Space-Time Cube) とは、時間と空間の関係を同時に可視化するための3次元的な図表です。地理情報科学(GIS)やデータビジュアライゼーションの分野で、時間変化を伴う空間データを分析する際に用いられます。

2次元の地図では空間のみ、時系列グラフでは時間のみを扱いますが、時空間キューブでは「横軸=地理的な位置(X・Y)」「縦軸=時間(Z軸)」という構造で両方を一体的に示します。

チャートの見方

要素意味
X・Y軸地理的な空間位置(例:経度・緯度、または都市・地点)
Z軸(縦軸)時間の流れ(下から上へ、または過去から未来へ)
点または線ある対象(人、車両、気象現象など)の位置とその変化
面またはボリューム一定期間または一定空間のデータ密度や分布
色・サイズ属性値の大きさ(例:人口密度、温度、移動速度など)を表現

たとえば、人物の移動を表す場合、各時点の位置がZ軸方向に積み重なり、「軌跡(trajectory)」として立体的に見えるようになります。これにより、ある地点での滞在時間や移動の速さ、活動範囲などを直感的に理解できます。

背景と応用例

時空間キューブは、1960年代に地理学者Hägerstrandによる「時空間プリズム(space-time prism)」という理論的概念に基づいています。この理論は、人間活動が時間と空間の制約の中で行われることを示したもので、後のGIS分析や人流解析に大きな影響を与えました。

現代では、以下のような応用が見られます。

  • 都市交通解析:通勤・通学の移動パターンを3Dで表示
  • 犯罪分析:発生地点と時刻の関係を立体的に分析
  • 環境モニタリング:温度・降水量・風速などの時系列空間変動を可視化
  • SNS投稿分析:時間と場所に基づく人々の行動・話題の変化を追跡

利用ツールと実装例

分野主なツール/実装例
GIS解析ArcGIS Proの「Space Time Pattern Mining」ツール
Web可視化CesiumJS、Three.jsを用いたWebGL立体描画
データ分析Python(Plotly、Matplotlib 3D、Kepler.glなど)
研究分析Hägerstrandモデルに基づく時空間プリズム解析(STCモデル)

まとめ

時空間キューブは、時間と空間を統合的に理解するための強力な可視化手法です。従来の2D地図や時系列グラフでは見落としがちな「変化の連続性」や「同時性」を、立体的に把握することができます。特に、人の移動、都市活動、環境変化などを扱うデータにおいて、その表現力が発揮されます。

参考・出典

Licensed under CC BY-NC-SA 4.0
Oct 22, 2025 22:33 +0900