ストリップ・チャート(Strip Chart)は、時間の経過に伴うデータの変化を連続的に記録・表示するグラフです。一般的には、横軸に時間、縦軸に観測値をとり、データがリアルタイムで更新される形で線として描かれます。
ストリップ・チャート(Strip Chart)は、時間の経過やカテゴリごとのデータ点を、線または点の連続として表示するチャートです。用途によって意味が少し異なりますが、共通するのは「個々のデータ変化を連続的に可視化する」点です。もともとは物理的なチャートレコーダ(strip chart recorder)として登場し、現在では統計可視化やリアルタイム監視画面などでも広く使われています。
工業計測、医療モニタリング、実験観測などで、時間的推移を可視化する目的に用いられます。

歴史的経緯
ストリップ・チャートは19世紀後半に登場した「ストリップチャート・レコーダー(strip chart recorder)」に由来します。これは、紙テープ(strip)を一定速度で巻き取りながら、ペンでアナログ信号を連続記録する装置です。温度や電圧、心拍などを物理的に記録することで、後から傾向を読み取ることができました。現在では電子的な時系列可視化手法に発展し、デジタル版ストリップチャートはモニタリングシステムや制御盤のUIで多用されています。
データ構造
ストリップ・チャートでは、主に以下のようなデータ構造を扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時間(Time) | 秒・分・時などの連続的な時間データ |
| 値(Value) | 測定された数値や信号の強度 |
| ラベル(Label) | センサー名や計測項目など |
このように、1変数の時系列データが基本構造となりますが、複数センサーを並列に記録するケースでは多系列のストリップチャートとして表示されます。
目的
主な目的は、時間経過による値の変化をリアルタイムで観察することです。異常の早期発見や傾向把握が求められる場面で、定量的変化を直感的に把握できることが利点です。
ユースケース
- 医療:心電図(ECG)や脳波(EEG)モニタリング
- 工業:温度・圧力・電流のリアルタイム監視
- 科学実験:センサー出力の経時観測
- ITシステム:サーバーロードやネットワークトラフィックの監視
特徴
- 時系列データの継続的表示に特化
- データが過去から現在へスクロールしていく形式
- 現在値の動的な変化がわかりやすい
- 一般的には「リアルタイムプロット」として実装される
チャートの見方
- 横軸(X軸):時間の経過を示します。右方向が現在時刻に近い。
- 縦軸(Y軸):測定値のスケール。上昇・下降の変化を読み取る。
- 線の動き:新しいデータが追加されると、古いデータは左にスクロール。
特に医療用途などでは、異常なスパイクや周期性の乱れなどが視覚的に即座に確認できます。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| 横軸(X軸) | 時間またはカテゴリを表す。多くの場合、左から右に経過する時系列を示す。 |
| 縦軸(Y軸) | 計測値や観測値を示す。温度、圧力、電圧、あるいは数値変数など。 |
| データ点/線 | 各瞬間または各観測データを表す。連続的な線でつなぐ場合も、点で離散的に示す場合もある。 |
| 更新・スクロール | リアルタイムの場合、新しいデータが右端に追加され、古いデータが左へ流れる(または消える)。 |
| ジッター処理 | 統計的ストリップ・チャートでは、データ点の重なりを防ぐために位置をわずかにずらすことがある。 |
デザイン上の注意点
- 時間軸のスケールを一定に保つこと(非線形軸は避ける)
- カラーリングは系列ごとに明確に区別
- 更新間隔が速すぎると可読性が低下するため、リフレッシュレートを最適化する
- 背景やグリッドを抑制して、波形を目立たせるデザインが望ましい
応用例
- 医療モニタリング装置の波形表示
- IoTダッシュボードにおけるセンサー値のリアルタイム可視化
- Webアプリでのデータストリーミング表示(D3.js、Plotly、Chart.jsなど)
- 制御システムにおける異常検知アラートとの組み合わせ
1. 計測・記録機器としてのストリップ・チャート
20世紀中頃まで、ストリップ・チャート・レコーダーは温度や電圧などの信号を紙テープに連続記録する装置として用いられていました。記録ペンが時間軸に沿って動くことで、変化を一目で把握できました。
今日ではこの形式がデジタル化され、リアルタイム監視用の波形ビューアやダッシュボードチャートとして継承されています。
2. 統計的ストリップ・チャート(Strip Plot)
統計学・データ可視化の分野では、ストリップ・チャートはカテゴリ別にデータ点を並べるシンプルな分布可視化手法です。
箱ひげ図(Box Plot)やバイオリンプロット(Violin Plot)と併用されることが多く、各観測値をそのまま点として可視化することで、外れ値や分布のばらつきを確認できます。
3. リアルタイム監視やIoTダッシュボード
センサー値やトランザクション量など、常時更新されるデータを時系列で追跡するために、ストリップ・チャートは現在も重要な役割を果たしています。スクロール式UIにより、常に最新の状態を右端で確認できます。
代替例
ストリップ・チャートに近い表現や代替として、以下のチャートも用いられます。
| チャート名 | 概要 | ストリップ・チャートとの違い |
|---|---|---|
| ラインチャート (Line Chart) | 連続的なデータを線で結んで表示 | ストリップ・チャートはリアルタイム更新・長時間データ記録を重視 |
| スキャッタープロット (Scatter Plot) | 2変数間の関係を点で表示 | ストリップ・チャートは1軸を時間に固定する点が異なる |
| バイオリンプロット (Violin Plot) | 分布の形状を密度として可視化 | ストリップ・チャートは個別点をそのまま可視化するため、構造が単純 |
| スパークライン (Sparkline) | コンパクトな時系列線グラフ | ストリップ・チャートは記録・監視用途で長時間スパンを扱う |
まとめ
ストリップ・チャートは、リアルタイム性と連続性を重視した時系列可視化手法です。アナログ時代からデジタル時代まで、観測・監視という領域で長く利用されてきた歴史をもち、現在でも工業・医療・IT分野で欠かせないチャートの一つです。
