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国際連合旗での地図投影法

この図は、国際連合(United Nations, UN)の旗を示しています。淡い青色の背景に、白い国連の紋章が中央に配置されています。紋章は、北極を中心とした地球の地図を背景に、オリーブの枝で囲まれています。本記事ではこの旗に描かれた地図に採用された地図投影法の意図を紹介します。

地図の見方

旗の中央に描かれている地球は「正距方位図法(Azimuthal Equidistant Projection)」によって描かれています。この投影法では、北極を中心にすべての国が均等な距離で配置され、どの国も特定の優劣なく表現されています。地図の投影範囲は南緯60度まで広がり、5つの同心円が含まれています。南極を外縁に、北半球の各大陸が放射状に配置されています。この投影法により、世界全体を一望できる構成となり、国連の普遍的な立場を象徴的に示しています。

正距方位図法とは

正距方位図法(Azimuthal Equidistant Projection)は、地球上の任意の1点を中心として、すべての地点をその中心からの距離と方位(角度)に基づいて平面上に投影する地図投影法です。中心点から他の点までの「距離」と「方向」が正確に保たれることが特徴で、特に航空航路や通信分野などで利用されてきました。

国連旗では、この投影法の中心を北極に置くことで、地球全体を「上から俯瞰する視点」で描き出しています。この配置によって、すべての国が平等に、同じ平面上に位置づけられるよう設計されています。つまり、どの国も特別に強調されず、政治的な中立性が視覚的に表現されているのです。

正距方位図法の特徴(まとめ)

項目説明
中心点任意(国連旗では北極)
保持される要素中心からの距離と方向
歪み中心から離れるほど形や面積が歪む
主な用途航空図、通信圏図、国連旗など
意味的特徴中心からの「つながり」や「等距離性」を強調

背景知識

国際連合旗は、1947年に採択されました。旗の背景色である「国連ブルー(UN Blue)」は、平和と希望を表す色とされています。紋章のデザインは、ドナルド・マクローリンらが手がけ、初期の国連会議で使用された地図をもとにしています。

正距方位図法が採用された理由は、地球全体を公平に描くためだけでなく「中心から世界へと広がる」象徴的意味を持たせるためでもあります。この視点は、国連が掲げる「国際協調」「平和の維持」「対話の中心」といった理念と密接に結びついています。

まとめ

国際連合旗は、デザインと地図投影の両面から「中立性」と「平和」を象徴する構成になっています。

特に正距方位図法の採用は、地理的な公平性とともに、世界の連帯を示す理念的デザインとしての完成度を高めています。

単なる紋章ではなく、地球のあり方と人類の関係性を可視化した、もっとも象徴的な地図表現の一つといえるでしょう。

参考・出典

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Oct 22, 2025 16:44 +0900