ベクトル・フィールド・マップ(Vector Field Map)は、空間内の各点でベクトル(向きと大きさを持つ量)を可視化する図です。こグリフ(例えば、長さと幅にデータ値を反映させた矢印)を使用して、色や長さでベクトルの大きさを、角度で方向を表します。主に物理現象や流体の動き、風向・風速、磁場や電場の分布など、方向性を持つデータを直感的に理解するために使われます。
この可視化は、各点に矢印(ベクトル)を描くことで、どの方向にどれだけの強さで「力」や「流れ」があるかを示します。ある点での(外向きの)拡散と(内向きの)吸収の傾向を予測するために使用することができます。

チャートの見方
| 要素 | 表すもの | 説明 |
|---|---|---|
| 矢印の方向 | ベクトルの向き | 各点における流れや力の方向を示します。例えば風向や電場の向きを意味します。 |
| 矢印の長さ | ベクトルの大きさ(強度) | 長い矢印は強い力・速い流れ、短い矢印は弱い力・遅い流れを示します。 |
| 矢印の色 | 強度やスカラー値 | 大きさを補助的に表したり、別の変数(温度や圧力など)を示す場合もあります。 |
| 背景グリッド | 位置の基準 | 各ベクトルがどの位置に対応しているかを示す座標系です。 |
| 等高線や陰影 | 補助的スカラー場 | ベクトルと同時にスカラー値の分布(例:速度ポテンシャル)を重ねることもあります。 |
主な用途と応用例
| 分野 | 主な対象 | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| 気象学 | 風の流れ・海流 | 風向・風速図、台風の流れ解析など |
| 物理学 | 電場・磁場 | 力の方向と強度の空間分布 |
| 流体力学 | 流速ベクトル | 流れの渦や収束・発散の可視化 |
| 医学・生理学 | 血流解析 | MRIベースの血流方向可視化など |
| コンピュータグラフィックス | ベクトルノイズ、流線 | 視覚的エフェクトやテクスチャ生成 |
関連する表現手法
| 手法 | 特徴 | 比較点 |
|---|---|---|
| ストリームライン(Streamline) | 連続した線で流れの方向を示す | 流れの連続性を強調できる |
| パスライン(Pathline) | 粒子の時間経過を追跡 | 動的な流れを表現 |
| グリフ・プロット(Glyph Plot) | 矢印や円錐などの形状でベクトルを表す | 多次元データにも応用可能 |
| コンツアー・マップ(Contour Map) | スカラー値を線で表す | ベクトルと重ねて使うと効果的 |
代表的な作例・ツール
| 名称/ツール | 概要 | URL(参考) |
|---|---|---|
| ParaView | 科学可視化ソフト。ベクトル場・流線の描画が可能 | https://www.paraview.org/ |
| matplotlib(Python) | quiver() 関数でベクトル場の描画 | https://matplotlib.org/stable/gallery/images_contours_and_fields/quiver_demo.html |
| d3.js + d3-force | Webベースで流れや力学的ベクトルの可視化 | https://d3js.org/ |
背景知識
ベクトル・フィールドの可視化は、19世紀の物理学や流体力学の発展とともに始まりました。マイケル・ファラデーは磁力線の概念を図として表現し、後にジェームズ・クラーク・マクスウェルが数式的なベクトル場理論を体系化しました。
現代では、数値流体シミュレーション(CFD)やリモートセンシングによって得られる高密度なデータを、ベクトル・フィールド・マップで動的に可視化することが一般的です。
まとめ
ベクトル・フィールド・マップは、方向と大きさを同時に表現することで、空間的な力や流れの関係を理解するのに非常に有効です。物理現象や社会現象など、多様なデータに応用でき、科学・デザイン・教育の分野で広く利用されています。
参考・出典
- Matplotlib Documentation – Quiver Demo
- ParaView Official Site
- Wikipedia – Vector field visualization
- Katy Börner — Atlas of Knowledge
- Katy Börner — Atlas of Science
- Tamara Munzner — Visualization Analysis and Design
