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時間‐距離図(Time-Distance Diagram)とは

時間‐距離図(Time-Distance Diagram) は、鉄道・交通分野を中心に用いられる可視化手法で、縦軸に「距離(または駅・地点)」、横軸に「時間」をとり、列車やバスなどの移動体の運行を線で表現するダイアグラムです。

横軸を時間に、縦軸を距離に取ることで 移動体の動き=時間と空間の関係 を一枚で視覚的に把握できるのが特徴です。

この図は「ダイヤグラム(ダイヤグラフ)」とも呼ばれ、特に日本では鉄道運行管理やダイヤ作成で長く利用されています。

図解の見方

時間‐距離図の基本的な読み方は以下の通りです。

  1. 横軸:時間(Time)
     左から右へ進むほど時間が経過します。多くの場合、縦線が一定間隔で引かれ、時刻(例:0時・6時・12時・18時など)が示されます。

  2. 縦軸:距離または地点(Distance / Station)
     上から下、あるいは下から上に駅や地名が並び、物理的な距離や停車位置を表します。
     駅間の距離が等間隔でない場合もあり、距離に比例させるか、停車順序だけで並べるかで情報の粒度が変わります。

  3. 斜線:移動体の運行経路(Train / Bus Line)
     線の傾きが移動速度を意味します。

    • 線が 急傾斜(垂直に近い) :移動速度が遅い(時間がかかる)。
    • 線が 緩やか(水平に近い) :移動速度が速い。
       このため 線の傾き=速度 という直感的な理解が可能です。
  4. 交差点:列車同士のすれ違い(Meet / Pass)
     2本の線が交わる点は、上下線の列車がすれ違う場所や時刻を示します。

  5. 停車区間(Horizontal segment)
     水平に近い線分は、駅に停車している時間を表します。停車時間が長いほど水平線が長くなります。

背景と応用

時間‐距離図は19世紀末から20世紀初頭にかけて発展したもので、当初は鉄道運行の効率化と安全性確保を目的に導入されました。

列車の遅延や待避、接続関係などを視覚的に把握できるため、運行管理者やダイヤ作成担当者にとって不可欠なツールとなっています。

また近年では、以下のような広い応用が見られます。

  • バス路線・都市交通の運行分析
     混雑や遅延の可視化に用いられます。
  • 自動運転車・物流ネットワークのシミュレーション
     複数車両の動きを時間軸上で統合的に解析可能です。
  • 鉄道ファンや教育用途でのデータ可視化
     運行計画の理解、時刻表設計の学習にも利用されています。

まとめ

時間‐距離図は 時間と空間を同時に扱う可視化の典型例 であり、単なる運行管理ツールにとどまらず、「動き」を直感的に理解するための強力な表現形式です。

その構造はシンプルでありながら、速度・遅延・接続など、複雑な関係を一目で伝える力を持っています。近年ではデジタル可視化やWebアプリ(例:D3.js, Observable, Mapboxなど)にも応用されており、交通設計・データジャーナリズム・教育など幅広い分野で再評価されています。

参考・出典

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