コロプレスマップは、地理的に区切られた領域に統計値を割り当て、その大小を色の濃淡や色相の違いで表現する主題図です。行政区画(国、都道府県、市区町村)ごとに集計されたデータの差異を視覚的に示し、地域間の比較を容易にします。人口密度、所得水準、投票率、感染症発生率など、多様な統計データに適用される汎用性の高い地図表現です。
歴史的経緯
最初期のコロプレスマップは19世紀に登場したとされ、1826年にシャルル・デュパンがフランスの識字率を濃淡で表した地図が代表例です。19世紀後半には統計学と官庁統計が急速に整備され、地域別の統計値を視覚化する手法として広く普及しました。20世紀には国勢調査や経済統計が整備され、GIS 技術の発展とともにデジタル地図として一般化し、近年はインタラクティブなウェブマップとして多くのメディアや行政機関で利用されています。
データ構造
コロプレスマップは大きく次の2種類のデータを組み合わせて構築します。
地理境界データ(Polygon)
行政区画や地域メッシュなどの境界を表すポリゴンデータ。形式は主に GeoJSON、Shapefile、TopoJSON など。統計データ(Attribute)
地域ごとに紐づく属性値。人口、比率、指数、割合など。
これらを共通の地域 ID(コード、自治体番号など)で結合し、各ポリゴンに統計値を割り当てます。値は連続量(人口密度)や比率(高齢化率)などが多く、分類方法(等間隔、四分位、自然分類など)によって階級分けを行い、それぞれに色を対応させます。
目的
コロプレスマップの目的は、地域間の差異や空間的な傾向を直感的に把握できるようにすることです。
- 地域間の値の高低を比較する
- 空間的な偏り(集中・分散)を俯瞰する
- 政策課題や社会現象の地理的特徴を理解する
- 読者が地図を見ただけで「どこが高く、どこが低いか」を判断できるようにする
特に、行政区画単位でデータが提供される統計分野では基礎的な可視化手法として重要です。
ユースケース
コロプレスマップは、社会、経済、医療、選挙、都市計画など、多くの領域で利用されています。
- 国勢調査における人口密度・高齢化率の可視化
- 感染症の地域別発生率
- 所得分布や住宅価格指数
- 交通事故発生率
- 投票行動(支持政党、投票率)の可視化
- 災害リスク(洪水、土砂災害、津波危険度)
統計値を行政区域に紐づけて扱いたいシーンではほぼ必ず候補に挙がる表現方法です。
特徴
コロプレスマップには次のような特徴があります。
- 行政区画を単位とするため、政策や行政分析に向いている
- 地域全体の傾向を直感的に把握しやすい
- 色分布が強いメッセージを持つため、誤解を生みやすい場合もある
- 分類方法やカラースケールの選択が結果の印象を大きく変える
- 面積の大きい地域が視覚的に目立ちやすく、人口規模と視覚のバランスに注意が必要
比率や密度などの正規化が不十分だと不適切な解釈につながるため、統計と地図の知識が欠かせません。
チャートの見方
コロプレスマップを読む際の基本ポイントは以下のとおりです。
色の濃淡・色相が何を意味するかを確認する
濃い色=値が高い、薄い色=値が低いという構造が一般的です。凡例(レジェンド)の範囲と分類方法を理解する
等間隔・四分位・自然分類など、どの分類方法が使われているかにより見た目が大きく変わります。分類数(階級数)を確認する
階級数が多すぎると判別しにくく、少なすぎると差異が失われます。地理単位に注意する
都道府県と市区町村では分布の見え方がまったく異なります。絶対値か比率かを必ず確認する
人口密度ではなく「人口総数」を着色すると、面積の広い地域が視覚的に強調され、誤った印象を与えます。
デザイン上の注意点
コロプレスマップを作る際には、次のような点に配慮する必要があります。
正規化された値を用いる(密度・比率・率)
面積や人口に依存しない値を使うことで公平な比較が可能になります。カラースキームの選択
ColorBrewer のような色覚バリアフリー対応の配色を採用することが推奨されます。分類方法の透明性
どの分類方法を選んだかを明記し、恣意的な区切りによる印象操作を避けるべきです。境界線の表現
境界線が太すぎると情報量が分断され、薄すぎると行政区の区別が判断しづらくなります。色の連続性
連続量であれば連続的な配色、カテゴリーであれば離散色を使うなど、データ型に適した選択が必要です。
応用例
コロプレスマップは、単純な濃淡表示に留まらず、応用的な使い方も可能です。
時系列アニメーション
年次データをスライダーで切り替えて変化を表現する。インタラクティブ表示
地域をクリックすると統計値の詳細を表示するインターフェース。人口密度×別指標の複合表示
コロプレス+ドットマップ、コロプレス+ハッチングなど。二変量コロプレス(Bivariate Choropleth)
2指標を色相と濃度で同時に表現する高度な手法。
代替例
コロプレスマップと比較される、あるいは代替として用いられる手法には次のものがあります。
ドット密度図(Dot Density Map)
個票の密度を表すため、面積の大小の影響を抑えられる。カルトグラム(Cartogram)
面積をデータ値に比例させ、値の大小を強調。等値線図(Isoline / Isopleth)
連続量を滑らかな面で表現する場合に有効。ヒートマップ(Grid-based Heatmap)
メッシュで空間を均等に扱い、行政界の影響を排除。
可視化目的に応じて、コロプレスマップが最適ではない場合もあるため、これらの手法と比較しながら選択します。
まとめ
コロプレスマップは、行政区画単位の統計データを扱う際に最も基本的で強力な主題図です。色の濃淡で差異を示すため直感的に理解しやすく、政策分析や社会調査、データジャーナリズムなど幅広い領域で用いられます。一方で、分類方法、色、地理単位によって印象が大きく変わるため、適切なデータ処理と設計上の配慮が欠かせません。目的に応じた可視化手法の選択が重要です。
