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ウォーターフォール・チャート(Waterfall Chart)

ウォーターフォール・チャート(Waterfall Chart)は、数値の増減を段階的に視覚化するための棒グラフの一種です。初期値から最終値に至るまでの変化を、増加・減少・合計の要素ごとに区分して表示することで、全体の構成要因を直感的に理解できます。

特に財務分析などで、利益やコストの内訳を示す際によく用いられます。ExcelやTableau、Power BIなど主要なビジネスツールでも標準機能としてサポートされています。

ウォーターフォールという名称は、棒グラフが段階的に上下に「滝のように」連なって見えることに由来します。

歴史的経緯

ウォーターフォール・チャートは1990年代に財務報告の可視化ツールとして普及しました。もともとは「Bridge Chart(ブリッジチャート)」と呼ばれ、収益構造や損益分析のためにコンサルティング業界や会計分野で活用されてきました。Microsoft Excel 2016で標準チャートとして正式採用されたことを契機に、ビジネスダッシュボードでも広く使われるようになりました。

データ構造

ウォーターフォール・チャートは、次の3種類の値を扱います。

種類説明
初期値(Starting value)分析の基点となる数値
増減値(Changes)プラスまたはマイナスの変化を表す中間値
最終値(Ending value)すべての変化を加味した最終的な合計値

これらを順に積み上げることで、段階的な変化を視覚的に追跡できます。

目的

ウォーターフォール・チャートの目的は、複雑な変化を単純な連鎖として可視化することです。全体の増減要因をひと目で把握し、どの要素がプラス要因・マイナス要因として寄与しているかを明確にします。特に経営指標(利益、コスト、売上など)のブレイクダウン分析に有効です。

ユースケース

  • 企業の損益分析(営業利益 → 営業外損益 → 経常利益)
  • 売上構成要素の分析(前年対比増減)
  • コスト構造の変化要因の特定
  • プロジェクトのステップごとの成果や支出の可視化

特徴

ウォーターフォール・チャートの特徴は、増減の連鎖を「浮いた棒(floating bars)」で表現する点です。棒の高さが変化量を示し、プラス要因は上向き、マイナス要因は下向きに配置されます。さらに、合計値の棒のみ基線に固定される点が特徴的です。

チャートの見方

  • 左端の棒:基準となる初期値
  • 中間の棒:各要因の増加・減少を示す(色分けで識別)
  • 右端の棒:最終的な合計値

棒の間に空白があることで、「水が階段状に流れるような」見た目になることから“Waterfall”という名称がつけられています。

要素説明
開始値(Initial Value)最初に基準となる値。例:前期の利益など。
増加項目(Positive Change)値を増やす要素。緑や青などの上向きの棒で表現されることが多い。
減少項目(Negative Change)値を減らす要素。赤やオレンジなど下向きの棒で表現されることが多い。
中間小計(Intermediate Subtotal)途中段階での累計を示す棒。色を変えて区別される場合がある。
最終値(Final Value)すべての増減を経た後の最終的な値。例:当期純利益など。

棒の高さと位置が、それぞれの要素が全体にどのような影響を与えるかを視覚的に示します。一般的には、棒が「浮いて」配置され、前の棒の上端または下端から次の棒が始まる形になります。

デザイン上の注意点

  • 増加と減少を明確に色分け(例:青=増加、赤=減少)
  • 合計値は異なる色または枠線で強調する
  • 要素数が多すぎる場合は階層化やグループ化を検討
  • ラベル(数値)を省略せず明示して読みやすくする

また、単位・期間・対象が明確でないと誤解を招きやすいため、凡例や注記の配置にも注意が必要です。

  • 増加と減少を明確に色分けする(例:緑=増加、赤=減少)
  • 中間値を強調し、ステップ構造が視覚的に追いやすいようにする
  • 最終値を強調表示(太い枠や異なる色など)
  • 横向き配置にすることでラベルを読みやすくする場合もある

応用例

  • キャッシュフロー分析:営業・投資・財務活動の寄与を表示
  • 人件費の変動要因分析:人数変動、給与改定、福利厚生などの影響を可視化
  • KPI分析:目標達成までの寄与要因(例:売上、コスト、顧客増減)を分解

さらに、棒の傾きやアニメーションを用いることで、時間変化を動的に示す可視化も近年では試みられています。

代替例

類似の目的を持つチャートには以下のようなものがあります。

グラフ種別特徴適した用途
積み上げ棒グラフ要素の内訳を比較全体構成比の把握
ウォーターフォール・チャート値の変化のプロセスを段階的に表示原因分析や要因分解
ガントチャート時間軸に沿った工程を表示スケジュール管理
ブレットグラフ目標と実績を比較KPI可視化

まとめ

ウォーターフォール・チャートは、全体の数値変化を要素別に段階的に理解するための有力な手段です。特に経営分析や財務報告では、要因分解をわかりやすく伝えるための標準的な可視化方法となっています。明確な色分けと構造設計により、複雑な数値の「ストーリー」を視覚的に伝えることが可能です。

ウォーターフォール・チャートは、ある数値がどのような要因によって変化したのかを、直感的に理解できる強力な手法です。財務分析だけでなく、ユーザー数・売上・コスト・リスクなどの要因を分解して説明する際にも有効です。
視覚的に「変化の物語」を語ることができるため、ストーリーテリング型のデータプレゼンテーションにも向いています。

参考・出典

Licensed under CC BY-NC-SA 4.0
Nov 12, 2025 18:06 +0900