イールド・カーブ(Yield Curve)とは、国債などの 異なる満期(期間)の利回りを結んだ曲線 のことを指します。日本語では「利回り曲線」とも呼ばれます。通常、横軸に「満期(年数)」、縦軸に「利回り(%)」をとり、短期から長期までの金利の関係を視覚的に示すチャートです。
イールド・カーブは 金利の期間構造(term structure of interest rates) を表し、景気動向の予測や金融政策の判断に広く利用されます。特に国債市場では、経済全体のリスク認識を反映する重要な指標とされています。
チャートの見方
- 横軸(X軸):国債などの満期(例:3か月、2年、5年、10年、30年など)
- 縦軸(Y軸):それぞれの満期に対応する利回り(%)
- 曲線(カーブ):各満期の利回りを線で結んだもの
たとえば、10年物国債の利回りが2年物より高い場合、長期の金利が高い「順イールド(upward-sloping)」となります。逆に、短期の金利が長期よりも高い場合、「逆イールド(inverted)」と呼ばれ、景気後退の前兆とみなされることがあります。
主な形状と意味
形状 | 名称 | 特徴・解釈 |
---|---|---|
上昇型 | 順イールド | 通常の形。長期金利が高く、経済成長への期待が強い。 |
平坦型 | フラット | 短期と長期の金利差が小さい。経済の転換期を示唆する場合がある。 |
下降型 | 逆イールド | 短期金利が長期金利を上回る。景気後退の予兆とされる。 |
背景知識
イールド・カーブは 債券価格と金利の逆相関関係 に基づいています。金利が上昇すると債券価格は下がり、金利が低下すると価格は上がります。この関係が、期間による利回り差(イールドスプレッド)として現れます。
また、中央銀行(日本では日本銀行)の 政策金利 の変化もイールド・カーブの形状に影響を与えます。たとえば政策金利が引き上げられると短期金利が上昇し、逆イールド化が進むことがあります。
米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が発表する**「米国債利回り曲線(U.S. Treasury Yield Curve)」**が世界的に注目されています。これは経済アナリストや投資家が最も参照する指標のひとつです。
まとめ
イールド・カーブは 金融市場の期待と経済の未来を読み解く「鏡」 のような存在です。順イールドが続く時は経済拡大期、逆イールドが発生する時は景気後退期の前触れとして注目されます。したがって、投資家や政策立案者にとって、このカーブの形状を理解することは極めて重要です。
参考・出典
- U.S. Department of the Treasury — Interest Rate Statistics
- U.S. Department of the Treasury — Treasury Yield Curve Methodology
- 日本銀行 — “(BOX6)国債買入れがイールドカーブに及ぼす影響”(PDF)
- 参議院 経済調査会 「イールドカーブとは?」(PDF)
- 松井証券 — 「イールドカーブは何がわかる?投資への活用方法」
- ORIX Bank — 「イールドカーブ・コントロール(YCC)とは?」
- Sangiin(参議院)発行「経済のプリズム」シリーズ — イールドカーブ・コントロール導入時解説